来 歴

処世術

この世に生きているのと引き換えに
人間はそれ相当の荷物を背負つているものだ
一日生きた分には一日分を
三百六十五かける十は
三百六十五かける二十はと
この勘定にはまちがいない
一日一日は正確に無数だから
しかし持主は一人なので
生きるということはこんなに重たいのだ
その上荷物の方で
私を通りこして先を急いだりすると
私はその分だけ身体なしで生きてしまうようになる
或時は動物たちである
或時は雲である
或時は草である私の中から
身体である私を見つけるために
三百六十五ひく十は
三百六十五ひく二十はと
きりもなくくり返すのだが
数字の足りない前のことは
誰が言つてくれるのかわからないのだ

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